catalinaの備忘録

ソフトウェアやハードウェアの備忘録。後で逆引きできるように。

情報処理技術者試験について思うこと

こんな記事が話題になっていたので乗っかってみます。

他人の出した話題、特に今回のような匿名ダイアリーにはあまり乗っからないのですが、昔の自分を見ているような気がしたので。

情報処理技術者試験なんて何の役にも立ちません

ちなみに私は最後に情報処理技術者試験受けてから6年くらい経ってるので、今は実情が変わっているかもしれません。あしからず。

情報処理技術者試験とは?

ひとまず試験区分一覧を見てみましょう。

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:試験制度:試験区分一覧

有名どころでは下端にある基本情報とその上の応用情報ですね。で、 基本情報から上に向かうほど高度になります(だいたいのイメージです)。

で、上部の「高度な知識・技能」の灰色枠にはピンク枠の縦書きがいっぱい並んでいますが、ここが高度情報処理技術者と位置づけられてるところです。

試験名を見ればスペシャリストかゼネラリストかだいたい予想つきますね。

偉そうに話する前に、どれか持ってる?

3つ取りました。

ここから先行くならプロマネ、アナリストと進むところですが、私の目的と合致しないので受けてないです。

情報処理技術者試験は役に立たない?

そのまま参考書を勉強するだけではスキルアップにはなりません。そのうえ引用元にあるような暗記方式では尚更でしょう。

そのままではスキルアップにはなりませんが、技術者として幅を広げるという役に立ちますので、ここで私の過去を振り返ってみます。冒頭の「昔の自分を見ているような気がした」フラグ回収です。

昔の自分を見ているような気がした

引用元の匿名ダイアリーを見ると、昔の自分を見ているようです。

今にして思えば、昔の自分は視野が狭かったなぁとしみじみ思います。

私はもともと映像関係の組み込みソフトウェア開発をしており、何年か前にWEB系にキャリアチェンジしています。

そういった経歴のため、引用元にある以下の出題に関しては「知っているし、実装技術についても理解していて当たり前」という話になってきます。暗記するどころか勘ぐってしまいます。

次の画像符号化方式のうち,携帯電話などの低速回線用の動画像の符号化に用いられるものはどれか。
    JPEG
    MPEG-1
    MPEG-2
    MPEG-4

私の思考:

MPEG-4と答えさせたいのだろう。しかし、問題文が抽象的だなぁ。。。
ワンセグならMPEG-4でいいけど、「低速回線」というのがどのくらいを指しているのかがわからない。
いやいや、「回線」というからには放送関係の話ではなくスマホのHLSの話になるのかな。
そうすると、HLSで使用されるコーデックの話か?ああ、でもHLSの中身ってH.264だし実質MPEG4か。消去法で見たときもMPEG4以外なさそうだし。MPEG4でいっか。

といった感じです。

問題の解きやすさ/解きづらさというのは、所属する業界と立場によるものが大きくて、たとえば上記例題は業務システムの実装がメインの人は少々解きづらい問題です。(=手っ取り早く暗記で解決でもいいレベル)

これとは逆に、勉強を始めた当初の私はDB関係の出題は一切解けませんでした。 なぜならDBなんて触ったことありません。なのでERDなんて見たこともないし、書くこともない。タイミングチャート読めてロジアナでデバッグできるほうが重要。そういう世界です。

こういった所属業界や立場ごとの差があるのでこの設問はダメだとか頭ごなしに拒否するのではなくて、「知らない業界の話かな。。。」程度に軽く受け流してから、腰を据えて勉強するのがいいんじゃないかなと思います。

私もDBを勉強するために、当時のVisualStudioの付録のSqlServerを立てて色々動かしてやっと理解しました。すごく遠回りだったとは思いますが、身についた内容は今も使えているので、無駄にはならないと思います。

(物理マシン1台用意したのは勿体なかったかもしれない)

情報処理技術者試験が役立つ場面

先の例では業界や立場によって問題の解きやすさが変わってくるよという話でした。

そうすると情報処理技術者試験って誰向け?ということになるのですが、試験制度を再確認すると「基本情報」と「応用情報」は「情報処理技術者」としての土台に当たります。

即ち「全員これくらいは知っていてほしい」というレベルで、ソフトウェア開発に従事する人であれば、各個人どこに位置するかを調べるための腕試しということで良いのではと思っています。

「基本と応用がこんな簡単なんだから、高度も簡単に合格できるのでは」と思う人はまず問題集を買ってからざっと見てみるといいと思います。

たとえばエンベデッドであれば午前問題からいきなり回路図出てきたりしてなかなかカオスで楽しい世界です。2入力ANDを3入力ANDにしたいとか。

午後はウォシュレットの設計や立体駐車場の入出庫システム作ったりと、身近なシステム例だからこそ楽しかった記憶があります。

話を戻しましょう。

まあ、とりあえずは「役立つ/役立たない」論争になったときのために取っておくのをお勧めします。

試験に合格しておけば「持ってるけど実務じゃ役に立たないよ。転職の時の飾りかな」程度にドヤれるのでお勧めです。

真面目な話を少しだけすると、仕事の幅が広がるというメリットがあります。

試験に合格しておくことで

  • 何の知識もないし、あるかどうかも不明な人

という評価が

  • 最低限この試験の知識くらいはある人

に上がります。 そうすると仕事の内容も幅が広がっていきますし、その結果は転職でも有利に働きます。 その試験の難しさやレベルを理解しない会社であれば、辞めてもいいと思います。はい。 (ただし、情報処理技術者試験だけがすべてではないということをお忘れなく。)

情報処理技術者試験が役立つ場面(ネタ)

ネタになってしまいますが転職時に人身売買ブラック企業を回避できるメリットがあります。

実際にあったことなのですが、、、

面接時

面接官「基本情報とかの資格もってる?」
自分「基本情報は持っていませんが、ソフトウェア開発技術者とエンベデッドを持ってます」
面接官「基本情報持ってないの?うーん、あなたの年齢でそれはちょっと厳しいねぇ。。。クドクド」

とありがたい説教いただいたことがあります。

話の内容から推測するに、お客さんから「基本情報くらい持ってる人を寄越せ」くらいに怒られたのかな?と思っています。

帰宅するとその会社からお祈りの留守電入っていたので、すぐポチって消しておきました。嫌な事件だったね。

尚、このネタは業界辞めるまで使い続けるつもりです。

情報処理技術者試験の問題点(試験のやり方が古い)

技術内容に関する設問は少々古臭いとはいえ、汎用的なものを目指すとこうなるのだろうと思っています。

それはそれでいいのですが、やり方が古いと感じます。これが最大の問題です。未だに受験者を会場に集めて筆記式ですよ。 この筆記試験の最大の敵。それは高度試験の午後問題でやってきます。

いくつかの高度試験の午後2に「小論文の筆記」というものがあります。 これは「2時間ずっと文字を書く握力があるか」を調べる体力測定試験です。 合計2000~3000文字くらい(具体的な数字忘れました)をひたすら筆記するわけです。

私は体力不足とエンピツの持ち方が悪いのが相まって、2時間書き続けることができませんでした。

で、小論文の筆記って極悪で、章構成の変更が効かないんですよね。一度書いたらそれっきり。書き直ししていたら時間切れになってしまう。 なので、よくある文章の書き方

  • アウトラインで全体の構成を作る
  • どんな内容を盛り込むかをだいたいの肉付けしていく
  • 清書

を勉強して、書き慣れる必要があります。

当時は文章の書き方を勉強しつつ、体力づくりのために腕立て伏せとかしていたのですが、なんというか、もはや試験とは全く別のところで苦労していて「いい加減に試験制度を見直しなさい」と言いたくなるレベルです。

暗記で解けない午後問題

言及元ではこのように批判されています。

情報処理技術者試験で測れる能力は以下の2つだけです。

    内容の理解はともかく、ある用語を「聞いたことがある」かどうか。
    150分間、落ち着いて椅子に座っていられるかどうか。

まあ、午前試験についてはその通りでしょう。

しかしこれでは主語が大きすぎています。 情報処理技術者試験は前述のとおり、いくつもの受験カテゴリがあり、それぞれで試験内容が異なります。

内容の理解はともかく、ある用語を「聞いたことがある」かどうかだけで解けるのはせいぜい午前問題までです。

応用情報以上の午後およびそれ以上の問題は暗記や「聞いたことがある」レベルでは解けなくなります。

たとえば応用情報以上でよく見かけた設問にこんなのがあります

  1. A氏は下図のような設計を行った。しかし要件を満たせないことがわかった。満たせていない要件を要件定義シート中から抜き出して述べよ

  2. 前の設問で抜き出した要件を満たせていないのはなぜか、本来要件を満たすべきプロセス名をDFD中から抜き出して述べよ

  3. 実際に要件を満たすために、プロセスはどのように変更されるべきか述べよ

(疲れている状態で勉強していると「A氏に修正させろ。レビューで突き返せ」と投げたくなる、素晴らしい設問です。疲労度チェックに使えます)

このテの設問は用語や基礎や暗記だけでは解けませんし、現場独自のルールみたいなのも通用せず、一般論で解けるように作られています。

  • 文章をよく読んで理解し
  • 要件定義、設計書などから読み取れることだけを事実として
  • 「普通こうでしょう」みたいなローカルルールは持ち込まず
  • 一般的なやり方で、説明可能な手法で物事を解決する

ことが求められます。 これが結構難しくて、現場でも出来ない人が結構います。

何かしらの技術を勉強中の段階では特に顕著で、直観的な理解だけで済ませていると詰まってしまいます。 私自身もそういう部分があって、新しい技術要素などを「なんとなく理解したつもり」で使っていても、その内容の説明を求められて詰まることがあります。

このように「直観的になんとなく」ではなく「理論的に理解している」ことが試されるのが午後問題です。

感想と今後の展望

珍しく他人の文章に言及しました。昔の自分も言及先と似たようなことを思っていました。

たしか昔はこんなこと考えてたと思います。

  • こんなの役に立たないでしょ。うちの仕事じゃ使わない
  • マークシート式なので暗記ばかり。勉強が楽しくない。

コードを書いていくクリエイティブさとと比べると情報処理の試験勉強はとても地味で刺激が少ないものです。 突然出てくる未知の用語がとても苦痛だった記憶があります。

日本では試験に合格しなくてもプログラマとして働いていける環境なので、情報処理技術者試験は「将来の自分の選択肢を増やすための手段の一つ」として捉えておくくらいで良いかと思います。

なので、引用元の方の仰るとおり、役に立たないと思うならそれはそれで良いと思います。 利用価値の見えないものに時間を使うくらいなら、もっと費用対効果の高いことへ時間を使った方が幸せになれるということでしょう。

もし将来気が向いて「体系立ててITに関する勉強をしたい」とか思った時に選択肢の一つとしてあればいいかなと思います。

私も情報処理技術者試験に関してはシステムアーキテクトを取ってからはもう手を出すのを辞めました。(確かこのブログを開設したのと同じくらいの時期だったと記憶しています。)

今は自分で作りたいものをどんどん作っていき、必要があれば情報収集と勉強を繰り返していくフェーズだと思っています。

それでは今回はこれくらいで。